飼育員らがピラルクの水槽を確認したところ、水面付近にある排水口に直径約1センチの穴が無数に空いていることがわかった。もともとは水中のゴミを吸い取るためのものだが、どうやらこの穴をすり抜けてプラスチックの管を通り地下の浄化槽まで流れ落ちたとみられる。
当時、ピラルクの水槽に放っていた金魚は体長3センチほどが多かったといい、「驚いて必死に逃げたのかもしれませんね」と里中館長は苦笑いを浮かべた。
「逆流」に耐え、快適な環境で成長
こうしてピラルクから命からがら逃げ出した金魚だが、浄化槽ではかなり快適な生活を送っていたようだ。
深さ30センチの浄化槽の底には砂が敷きつめられている。そこには、ピラルクの水槽から固形エサの残りカスなどが絶えず流れ落ちているという。
飼育員の出口大輔さん(20)は「残りカスといっても栄養バランスはばっちり。ピラルクの糞から有機物のバクテリアをエラでこし取って食べていたとも考えられます。食生活は相当恵まれていたと思いますよ」と解説する。
しかし、金魚にとっては安住の地のようにみえても、実は何度も身の危険にさらされてきた。浄化槽にたまったゴミを除去する月1回程度の清掃作業「逆流」だ。
水を逆流させることで砂にたまったゴミを水中に散らし、濁った水を流してしまう。「身体の小さい金魚が一緒に流されてもおかしくありません。一度も流されなかったのは奇跡」と出口さんは目を丸くする。一方、定期的に逆流を行うことで水中に酸素を送り込む効果があり、金魚にとっては快適な生息環境が維持されたとみられる。
地下にある浄化槽は普段は真っ暗闇で、飼育員らは投光器を片手に作業している。そんな飼育員らの目さえもかいくぐり、金魚はすくすくと成長した。「魚がいるとはまったく想像できなかった」と出口さんは話す。