□日本エネルギー経済研究所理事・山下ゆかりさん
■バランスとれた電源構成
--政府は2030年度までの長期エネルギー需給見通しをまとめ、再生可能エネルギーを22~24%、原子力を20~22%とする電源構成を決めました。どう評価しますか
「一言で申し上げますと、バランスのとれた案だと思います。世界のエネルギー需給環境の変化などで足元のエネルギー資源価格は低下していますが、日本は資源を持たない国です。東日本大震災後に停止した原子力発電所を火力発電で代替するための燃料輸入額が増え(経産省試算では14年度で年間3兆7000億円)、貿易赤字が続く一因となるなど、エネルギー調達は国の経済に大きく影響します。一方で、中東やウクライナ、南シナ海などでの地政学的な問題を含む国際情勢の変化がエネルギー資源の入手を制限したり、調達価格の高騰に結びつく懸念があり、エネルギーを取り巻く状況は不確実性を増しています。何が起こるかわからないような国際情勢の中で国内のエネルギー資源に乏しい日本は、準国産エネルギーである原子力がいかに大事であるかということを思い起こす必要があります。同時に再生可能エネルギーの位置づけが高くなりました。『原子力対再エネ』といった対立の構図ではなく、再エネでも地熱や水力を、天候に左右され出力変動が大きい太陽光や風力とは区分けして、原発と同様に年間を通じて安定的に発電できるベースロード電源に位置づけるなど、それぞれの電源の特質を踏まえた電源構成を考えた結果、わかりやすくなりました。しかし、今回のプランはあくまでも『徹底した省エネルギー』を前提としたうえでの配分であり、省エネがプラン達成のカギを握っています」