日本スポーツ振興センター(JSC)、所管する文部科学省、財務省、有識者会議などが寄り集まり、どこに最終的に「権限と責任」があるのかあいまいな体制のまま、この「国家プロジェクト」を進めた。組織の体を成していないのだから、大失態を演じたのも道理だ。
このため誰が結果責任を負うべきか判然としない。検証委員会は「あえて」と断って、JSCの理事長、文科相、事務次官を挙げている。
エンブレムの撤回についても、責任の所在はあやふやである。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の武藤敏郎事務総長や遠藤利明五輪相は「一カ所にあるとは思わない」「組織委員会、審査委員会、デザイナーの三者三様」などと言っており、つかみどころがない。
70年前、惨めな敗北に終わった戦争の責任が誰に帰するのか、はっきりしないのと本質的には同じである。当時の統治構造では、総理大臣に最終的に決める権限はなかった。これほど大きな「集団意思決定」の悪い見本は他にはないだろう。