しかしみな悪気があってのことではなかろう。新国立競技場建設計画の検証委員会が言うように、関係者は「真摯(しんし)に取り組んできた」。エンブレムについても、同様に違いない。
ただし意思決定は、論理を超えた「『やむをえない』という『空気』」(検証報告書)によってなされた。これは無責任体制の組織の宿命といえる。似た失敗が、またどこかで繰り返される恐れがある。
【プロフィル】森一夫
もり・かずお ジャーナリスト 早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は「日本の経営」(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。65歳。