TPP対策を議論する自民党の農林関係会合=17日午前、東京・永田町の党本部【拡大】
ある自民党幹部は、従来の農政は山間部など条件が不利な地域の支援や、天候不順による収入減少の補填(ほてん)などの保護策が中心となり、「農家の所得や農産品の需要を拡大させる思想がなかった」と振り返る。
その最たる例が平成5年に関税貿易一般協定(ガット)の多角的貿易交渉(ウルグアイ・ラウンド)で合意した際の対応だ。農家の保護を求める与党の声に押され約6兆円の対策費を積み上げたが、「使い道に困って多くが(農道や温泉施設などの)公共工事に向かった」(谷津義男元農林水産相)。予算のバラマキは農業の体質強化に結びつかないとの苦い経験がある。
だが、今回の対策でもコメなどの農家の不安払拭策に比べ競争力強化策はなお「不十分」との見方は自民党内でも少なくない。同党は今後設置するプロジェクトチームで来年秋をめどに対策の第2弾をまとめる。ただ、党内や農水省の一部にはTPPを契機に農業土木費などの増額を目指す動きもあり、ウルグアイ・ラウンドの二の舞いとなりかねない。(田辺裕晶)