「自社の利益を優先する事態がどこからきているのか。問題は非常に深刻だ」。拡大の一途をたどる三菱自動車の燃費データ不正問題で、26日に記者会見した相川哲郎社長は改めて厳しい見方を示した。一方で、不正に関与したとされる元担当部長については「(不正を)指示した事実は確認できなかった」とこれまでの発言を翻した。違法な方法でデータ測定が実施された車種名も公表せず、「調査中」という言葉を繰り返した。
三菱自動車によると、同社は、新型車の発売前に受ける燃費試験で、法令で定める方法とは異なる方法を使って、走行時のタイヤや空気の抵抗データ(走行抵抗値)を測定。燃費を良くみせかけるため、計測データの中から小さい値を選別して走行抵抗値を算定し、試験車以外は実走実験を行わず机上計算で出していた。
20日の会見ではデータ測定を指示したとしていた元担当部長について、「調査の結果、指示をした相手、内容などで(不正は)確認できなかった。部長という立場から責任を感じて(『指示をした』と)発言したとみられる」と述べ、20日の会見内容を撤回した。
法令に基づく方法でデータ測定をしていなかった車種について、相川社長は「正規の方法でデータを取り直し、どれだけの差があるかをそろえた上で別途報告させていただきたい」と述べるにとどめた。さらに、「誤っていると認識していたかどうかが分からない。これでいいと思ってやっていたものが伝承されて続いてきた可能性もある」と話し、外部調査による全容解明を求めた。
また、一連の不正が行われた背景の一つとして、中尾龍吾副社長は他社の低燃費機能が向上していたことを挙げた。問題の車種の開発では、平成23年2月当時の目標燃費は1リットル当たり26・4キロだったが、25年2月には同29・2キロまで5回にわたり引き上げられている。中尾副社長は「ダイハツのムーブの存在が大きかった。競争社会の中で、担当部門が数字を示した。上から指示したことはない」とした。
一方、同社が重ねた不正に対し、自動車業界では「信じられない」「業界として迷惑だ」と批判する声が相次いだ。自動車各社は国土交通省から同様の不正がないか調査し、5月18日までに報告するよう求められている。