インド中部のペンチ国立公園に生息する野生のベンガルトラ=3月(共同)【拡大】
インドで絶滅の危機にあったベンガルトラが増えてきた。政府の保護策を後押ししたのは、トラを神聖視する多数派ヒンズー教の考え方だ。一方で人間とトラの生活圏が重なるようになり、人間が襲われる事件も発生している。
トラの保護区があるインド中部ペンチ国立公園。深い森を車で走り3時間。枯れた川で休息するベンガルトラがいた。「トラを発見する確率が高まった。餌のシカも十分いる」。ガイドのゴビンダ・シンさんは胸を張った。
公園当局によると、保護活動により公園のトラは過去10年で3~4倍増え、現在は約60頭。見学者用のホテルも20軒以上建設されたが、トラに負担をかけないよう3年前からは公園に乗り入れる車両を制限している。
インドでは英領時代の狩猟のほか、漢方薬や毛皮目当てによる乱獲でトラが激減。20世紀初頭には約4万頭いたが、1970年代には約1800頭となった。
危機感を持った政府は約400人態勢の特別チームを設置。密猟取り締まりや森林保全を強化し、2014年には2226頭まで回復した。インドは野生トラが最も多く生息する国だ。
一方、人口が年に1000万人以上のペースで増えているインドでは、毎年、数人が放牧地などでトラに襲われて死亡。15年には西部ラジャスタンで4人を殺害したとされるトラが捕獲された。
しかしヒンズー教徒は、トラを女神ドゥルガーの乗り物として神聖視する。住民もトラとの“共存”に寛容だ。