
ADHDの治療方法などについて説明する岩波明氏【拡大】
取ったメモの存在を忘れる。上司や同僚の名前を覚えられない。自ら症状について調べ、岩波医師のADHD専門外来を受診した。「詳しく聞くと、子供の頃から忘れ物・落し物が多く、思春期以降、対人関係が苦手だった。さまざまな点からADHDと診断。彼は大人のADHDの典型的なパターンを示しています」
ADHDは生まれながらの疾患なので、大人になって突然発症するのではなく、子供の頃から多動、衝動、不注意の症状がある。しかし、学生時代までは自分なりの工夫や周囲の配慮で、それなりに適応が取れる。
ところが社会人になると、仕事のプレッシャーやストレスが格段に増し、ADHDによる不適応が顕在化。周囲から否定的に評価され、プレッシャーやストレスが一層増し、時に鬱状態などを招く。岩波医師が診るADHD患者の6~7割は、この「大人になって初めてADHDに気づいた」タイプだという。
生活がらりと変わる
どういう症状が見られればADHDを疑えばいいのか。よくある例では「注意の持続が困難」「先延ばしにする」「仕事が遅い」「混乱しやすい」「時間管理が下手」「片付けが苦手」「よく物をなくす」「約束を守れない」などで、不注意に関連する。「貧乏ゆすり」や「落ち着きのなさ」(多動)、「不用意な発言」や「つい叱責する」(衝動)などもある。