医師が患者の自宅や介護施設などを訪ねて診察する訪問診療だけを専門に行う診療所の開設を、厚生労働省が4月から認めた。急速に進む社会の高齢化に伴い、在宅での医療を望む人が増えることを見込んだ対応だ。こうした診療形態は今後地域に増えていくのか、注目される。
持病の悪化予防も
「腰の痛みはどうですか」「まあまあですね」
今年3月、川崎市にある有料老人ホーム。医師の西山葉子さんが、高血圧など複数の持病がある女性(99)の居室を訪れた。定期検査の数値をチェックしながら女性を診察し、薬の種類を体への負担が少ないものに変更した。
この日20人弱を診察した西山さんは「要介護で通院が難しい高齢患者への訪問診療は、持病の悪化や体調の急変を予防する意味もあります」と話す。
西山さんが所属する横浜市の「青葉アーバンクリニック」は昨年の開設以来、月平均約330人の在宅患者を医師7、8人で診る。外来患者は月に数人と少なく、その分、訪問診療に集中し、在宅で最期を迎えるみとりまで対応する。