文化遺産登録5周年、「世界の宝」富士山 課題も (1/4ページ)

裾野に雲がかかる富士山。下は山梨県の山中湖=8日
裾野に雲がかかる富士山。下は山梨県の山中湖=8日【拡大】

  • 観光客らでにぎわう景勝地、三保松原=9日、静岡市清水区
  • 三保松原の海岸に積まれた消波ブロックと、設置が進むL字形の突堤(奥)=9日、静岡市清水区

 世界文化遺産「富士山」(山梨、静岡)が22日に登録5周年を迎えた。自然遺産ではなく、信仰と芸術の山という文化的価値をアピールした戦略が奏功。景勝地・三保松原が事前審査で除外勧告を受けながらも、その後の巻き返しで逆転登録を勝ち取ったことも話題となった。「日本の象徴」から「世界の宝」に昇華し、国境を超えて人々を魅了し続ける名峰の今を探った。

 富士山は2013年6月22日、カンボジアで開かれていた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で登録が決まった。委員会決議は、長い山岳信仰の伝統に加え、葛飾北斎や歌川広重の浮世絵に描かれた姿が西洋芸術にもたらした文化的な影響を「衝撃」と言い表し、称賛。一方で、山中湖など一部の構成資産が「観光と開発の圧力に直面している」と強い懸念も示した。

 1990年代、富士山は日本を代表する「山」として世界自然遺産への登録を目指す運動が盛り上がった。だが政府は03年、ごみによる環境汚染などを理由として、ユネスコに推薦する候補には選ばなかった。山梨、静岡両県などの地元は次に、信仰や芸術の側面に着目。文化遺産に路線変更し、登録に近づいた。

 ところが登録審査の直前、試練が襲った。ユネスコ諮問機関が山から45キロ離れた三保松原を「山の一部とみなせない」として、除外を勧告。一括登録が危ぶまれる中、当時の近藤誠一文化庁長官らが各国関係者を説得する異例のロビー活動を展開し「奇跡の逆転」(同庁幹部)につなげた。

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