戦争体験が生んだアンパンマン
自身の戦争体験が、アンパンマンの誕生に大きく起因している。昭和16年に徴兵され、中国へ出征した。当時、食糧がなく、タンポポなどの野草を食べたことも。人間にとって最もつらいのは「飢え」だと痛感した。さらに敗戦と同時に、正義とは何かを考えた。
「正義とは、ミサイルをぶっ放して相手をやっつけることなのか。俺はそうじゃないと思ったのね。飢える子供たちを助ける方が先決なんじゃないかと」
世界には今も、飢えで亡くなる多くの子供たちがいる。ストリートチルドレンの報道にも心を痛める。「本当の正義の味方は、戦うより先に、飢える子供にパンを分け与えて助ける人だろうと。そんなヒーローを作ろうと思った」
アンパンは、表面がパンで中身はあんこ。食事にも、お菓子にもなることに着目。言葉の“音の響き”がいいことにも惹かれたという。実は自身も毎朝パン食。「おいしいし、簡単だから、30年くらいずっとそうです。最近は昼もパン。アンパンも好きだったけど、糖尿病になって食べられない」と笑わせた。