自ら傷つくことなしに正義なし
ヒーローが自らの顔をちぎって弱者に与えるのは「自分が傷つくことなしに正義を行うことはできない」というやなせさんの考えから。昭和48年に発表。児童向けに書かれた絵本だったが、内容が難しすぎると評論家に酷評された。だが、幼稚園では幼児たちが奪い合って読み、図書館貸出率が第1位と聞いた。本人も驚く反響だったという。
「(作品を)認めてくれたのは、2、3歳の幼児だった。驚いたよ。俺自身、ずっと小さな子供向きの本を書いてこなかったから。アンパンマンの最初のキャラクターはかわいくないしね」と笑う。作品の中に込めた“献身の心”は、頭で理解できずとも心で感じられるのだと分かった。幼児向けにキャラクターを3頭身にするなど、愛らしさをプラスした。
「着ぐるみやグッズなどを作りやすいキャラクターだとよく言われるんだけどね。それは、俺が元デザイナーだからだよ(笑)。少ない描線にし、シンプルに作れるようにしているからね」とほほえんだ。