等身大の人物を主人公に据え、日常の風景を描いたが、これまでの恋愛小説では省かれてきた「性」の部分を正面から取り上げた。「男性には風俗の世界があり、オープンに性が語られてきたのに対し、女性が性を語ることはタブー視されてきた。でも女性も、ドキドキするような官能の世界を求めているのです」と編集長の波多野公美さん。読んだ後に、ほおを染めるようなときめきを感じてもらい、「仕事に家事に一生懸命生きる女性たちのサプリメントになれば」と思いを込める。
官能に貪欲な女性が社会を成熟させる
女性の官能世界の広がりについて、精神科医で立教大学教授の香山リカさんは「昔は性に対して受け身だった女性も、経済力をもち、自分の意見をきちんと主張するようになり、性に積極的な人も増えてきた。草食系男子が増えていることもあり、性への貪欲さは男女で逆転しつつあるかもしれません」と話す。また、「官能教育 私たちは愛とセックスをいかに教えられてきたか」(幻冬舎新書)などの著書がある宗教人類学者の植島啓司さんは「日本人は、女性が悦楽におぼれることは罪だという考えが根強かった。けれど、女性が強くなり、社会のイニシアチブを握るようになり、性については今や男女同権。女性が悦楽を語り、例えば愛人をもつ、というようになれば、成熟した社会になるんじゃないでしょうか」と話している。