つい気を抜いて、オーロラを見くびったのがいけなかったのだろうか。ふらふらと町を散策していると、オーロラは突然光を強めて頭上で爆発した。首が痛くなるような真上でぐるぐるととぐろを巻き、エメラルドグリーンの閃光がぱっと広がったかと思うと、その先端はピンクや白に色を変えていく。なんだかメデューサの髪のようだ。想像に背筋がぞっとしてオーロラに背中を向け、逃げても逃げても背後から迫ってくる。やさしい笑顔から一転、冷たい怒りが炸裂したのかもしれない。
少女のようにいたずらっぽいキュートさを見せてくれたのは、帰国便の機窓だ。ヘルシンキを出発して2時間ほどすると、オーロラが姿を現した。まるでふざけて追いかけっこをするように、飛行機の前に回ったり遠ざかったり。水平視点から見た一風変わったオーロラの残像が、いまも目に残る。
“オーロラは女性のように気まぐれ”なんて、女性のひとりとして承服しかねる。そう思っていたけれど、振り返れば、猫の目のようにくるくる表情を変える、自由気ままな彼女=オーロラに、毎晩すっかり振り回されたのだった。
■取材協力:フィンエアー/スカンジナビア政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。