ノロウイルスによる食中毒はかつて、カキなどの二枚貝が原因とされることが多かった。最近は感染者が調理することで食品が汚染され、それを食べた人が感染するケースの方が圧倒的に多くなっている。原因食材はさまざまで、浜松市の小学校で相次いだノロウイルスによる集団食中毒は、学校給食で提供された食パンが原因だった。
過去には、仕出し弁当や漬物、菓子など大量調理施設で調理された食品が汚染源となり、多数が感染したケースが報告されている。仕出し弁当など昔は1つの施設で作るのは多くても数十人分ぐらいだったが、今は数百人、数千人分を調理する施設も珍しくない。このため、問題があると一度に大量の食品が汚染されてしまう。食品をめぐるこうした社会環境の変化もノロウイルスによる食中毒が増えている一因といえる。
症状ない人も
嘔吐や下痢の症状は通常は2、3日で回復する。ただ、症状がなくなった後も2~3週間にわたって糞便(ふんべん)中にウイルスが排出される。また、全く症状が出ない不顕性感染もある。「症状が出ず、感染に気づかない人も多いが、自覚症状がなくても感染後、1週間ぐらいはウイルスを排出する。食品を扱う仕事や家庭で調理をする人は症状の有無にかかわらず、調理前に丁寧に手を洗うことが大事だ」と西渕教授。