ジョナサンが消えた後の物語である最終章によって、これまで思わせぶりに見えていた幾つかの箇所が結末への伏線であったことが明らかになり、自由や挫折や救済についての味わいが深まりました。絶望の苦味が増して、希望がより輝いてくるのです。ここには、今を生き難く思っている人へのさまざまなヒントが詰まっています。
旧版の翻訳が刊行された40年前、〈訳者あとがき〉で五木寛之さんはこの作品に疑義を呈し、怒った読者があとがきの頁を破り捨てたという逸話があります。完成版を訳し終えて、五木さんは「ああ、バックはこれを書きたかったのかと、長年の胸のつかえが下りた気がした」と語っていました。今回も刊行後、早速ベストセラーになっています。(新潮社・本体1300円+税)
新潮社 出版部 楠瀬啓之