小さな字がびっしり並んだ小林さんの手帳。行間に必死さがにじむ【拡大】
職場には病名を言わず、2年を過ごした。最後は業務をこなせなかったから、同僚は分かっていたはずだ。だが、辞めろ、とは言われなかった。佐代子さんは涙をこぼす。「言わなければいけない、言わなければいけないと思っていました。でも、主人には仕事は人生そのものでした」
退職後、2人は漢字ドリルを買い求めた。小学3年生用を始めたが、途中で書けなくなった。2年生用に替えたが、それもできなくなり、1年生用にした。最後のひらがなのドリルには一文字も書くことができなかった。
あれから約10年。健太郎さんは話はできなくなったが、自宅で穏やかに暮らしている。デイサービスを「出勤」と思ってか、楽しみにする。1人分の菓子は佐代子さんに分け、童謡を口ずさめば涙をためる。「悲しさや苦しさ以上に感動がある」と佐代子さんは話している。