本著者の選んだ小項目は皆魅力的ですが、特に武士としての心得の中の「義」と「私忿」の文中の「此(こ)の義は事の宜しきに合(かな)うて、而(しか)も果断裁制を以って用をなすことなれば、暴戻(ぼうれい)怠惰の致すべきに非ざるなり」と「正々私忿の為(ため)に碎折(さいせつ)するは、誠に不忠なることなり」の所です。著者は武士に私憤はないと断じています。また、武士の志の中で「大勇(中略)容易に小節小事の為に振ふべきに非ず」という一節を選んでいます。そして男子の覚悟では「千古同情」の中の「非常」と「常情」の差を認識して「非常の事を為(な)すことが至理」と吉田松陰が考えていたと著者は感じています。義・志・誠を語る吉田松陰が、「情」に道理を求めた事を釈迦や孔子、孟子と同じ考え方から出ていると著者は言うのです。見事な論です。(川口雅昭著/致知出版社・1600円+税)
【プロフィル】吉村作治
よしむら・さくじ エジプト調査隊を組織し、約半世紀、発掘調査に携わる。公式HP「吉村作治のエジプトピア」http://www.egypt.co.jp/。
●=答にりっとう