間断なきテロと欺瞞(ぎまん)で構築されたソ連の独裁政権をレーニンから禅譲されたスターリンは、政治的敵意はもとより、病理的憎悪、嗜虐性、復讐(ふくしゅう)欲、脅迫偏執症などに突き動かされたためか、ますます国家テロをエスカレートしていく。彼の比類なき残虐性のために、国内外の政敵や良識派知識人はもちろんのこと、あろうことか、レーニン、その妻クルーブスカヤも、犠牲になったといわれている。また、毒物開発の実験台にはロシア人囚人を筆頭に、第二次大戦直後にシベリア各地に強制抑留された元日本兵や元ドイツ兵などもいた。
そして今日、隣国の日本としては、唯我独尊のスターリンの申し子のごときプーチン大統領が支配する超大国ロシアとの新たな関係を模索することが焦眉(しょうび)の急なのである。
そう考えると、本書は、ロシアの実情を認識する格好の書であり、また「言論の自由の抑圧」がいかなる国家を作ってしまうかを暴露している警鐘の書でもある。(アルカディ・ワクスベルク著、松宮克昌訳/柏書房・2200円+税)
評・川成洋(法政大名誉教授)