『ナショナリズム入門』【拡大】
だが、こうした具体的事例の背後には、はっきりと、一つの問題意識が貫かれている。それは私たちが抱くネイションへの「愛着」が相反する傾向をもつということだ。
まず第一に、明治維新のころを見てみよ。国家への愛着=考え方にはさまざまなバリエーションがあった。にもかかわらず、元来多様であるはずの愛着は、ともすれば柔軟性を失って、同じ意見しか許さない「こだわり」へと変化するのだ-特に大衆社会では、皆が同じ方向へと雪崩を打って突き進む「こだわりナショナリズム」が生まれる危険性がある。
筆者は静かに書物を繙(ひもと)きながら、ネイションへのさまざまな発言が許される国家を目指しているようだ。国家への興味は、いろんな議論があっていい。(講談社現代新書・840円+税)
評・先崎彰容(東日本国際大教授)