『ヌードと愛国』池川玲子著(講談社現代新書・800円+税)【拡大】
智恵子抄の智恵子が描いた百年前のリアルすぎる男性デッサンから第一章が始まる。輸出用映画しかも官製(しかも真珠湾攻撃の年)の宣伝映画に映るヌード。女性初の映画監督がいて、異端児・武智鉄二監督がいる。第七章で凝視するのは「裸を見るな。裸になれ。」-70年代のパルコのポスターだ。アートディレクター石岡瑛子のヌードへの執着を池川は丹念に追う。70年代の女性像。70年代の東洋と西洋の色。石岡の見せた誇り(プライド)と隠した怒りを、書く。その肯定的な書き方が、新鮮だった。
この章に続くあとがきに、写真集『臨月』が出てくる。百人の臨月の女性を白黒で、自然光だけで撮ったドキュメントヌード。私の本だ。1996年度の太陽賞(平凡社主催)の審査では、荒木経惟らとともに石岡瑛子も選考委員を務めた。池川の描く石岡像を読んで、20年近くも経(た)ってこの人にやっと出会った、という気がしている。
あとがきで「今の女子学生が気にするヌード」を挙げたことで、池川は、さあて、またここから、と動き出すだろう。現代史家はタフだね。(講談社現代新書・800円+税)
評・野寺夕子(フォト・ライター)