「ポップ中毒者最後の旅」川勝正幸著(河出書房新社)【拡大】
単にDVDを見ています、CDを聴いています、というレベルではなく、クラブやライブ、美術展などに顔を出し、アーティストたちと交わり、原稿を書いて書物を編集する。リンチがパリの百貨店で展覧会をやっていると聞いたら自腹で飛んでいく。あとがきとして解説を寄せている編集者の君塚太氏によると、執筆や取材の前には準備に準備を重ねて臨んでいたそうで、いったいいつどこで寝ていたのだろうとさえ思う。
まさにポップ中毒者を自称するにふさわしいが、著者は平成24年1月に55歳でこの世を去っている。これからも次々と生まれてくるであろう刺激的な文化をどのように切ってくれたのか、もう見届けることができないのは残念としか言いようがないが、遺稿を集めたこの本に載っている作品やアーティストの中には、当方がまだ触れていないものが大量にある。この最後の旅に付き合うだけでも、相当な興奮を覚えるに違いない。(河出書房新社・2700円+税)
評・藤井克郎(文化部編集委員)