フィリピンの独立と日本【拡大】
しかし、その言動を史料に基づいて検証していくと、ラウレルは日本軍の不当な要求、干渉、圧力の中にあって、常にフィリピン国民のことを第一に考え、体を張って日本軍に異を唱え、フィリピン人を護(まも)り抜こうとしたことが分かる。当時、大統領特別顧問としてラウレルを支えた浜本正勝による回想がそのことをよく物語っている。
戦時下のフィリピンでは、日本側の不当な要求に抗し、フィリピンとフィリピン人を護ろうとしたリカルテとラウレルを尊敬する日本人が少なくなかったとも聞く。
本書はこうした2人のフィリピン人を、南進という日本の国策に協力した親日的なフィリピン人としてではなく、困難な時代にあって戦い抜いた真のナショナリストとして描いている。2人に共通するのは未完のフィリピン革命の成就を追求した点である。
著者は長らく現地で暮らしたフィリピン現代史の研究者で、平易な文章の随所に専門的な知見が生かされている。冒頭に描かれる19世紀後半から20世紀初頭のフィリピン民族運動の描写も素晴らしい。(寺見元恵著/彩流社・2500円+税)
評・寺田勇文(上智大学総合グローバル学部長)