期待していた物売りは、バンコク出発時に炒めたご飯や麺といった簡単なパックを売りに来たものの、売り切れじまいでたちまち姿を消した。ほとんどの乗客は、夕食と朝食の2食分の弁当や水筒、菓子類を大量に持参している。
このままでは酒が飲めないどころか、食事にもありつけなくなりそうだ。食堂車に向かおうとすると、相席の若いお母さんが必死に引き止める。「食堂車は値段が高すぎる。物売りから買うほうがマシだし、売り切れていたら分けてあげますから」。
「この人、食べるものがないんですって」と、周りの乗客から食べ物を集めようとするお母さんを必死に押しとどめ、なんとか食堂車へ駆け込んだ。通りすがりに客席をのぞくと、麺売りが来たらしき車両ではみんなが麺を、ごはんを持った物売りが乗った車両では揃ってごはんを食べているのがおかしい。
ひまそうな食堂車では、乗務員が食卓に座っておしゃべりに興じていた。今夜、食事をとりに来た客は私がふたり目。客席にもデリバリーしていて、1組にすでに配達を済ませたらしい。