バター不足の原因を農水省は「何よりも原料の生乳の生産量が減ったことです」と説明する。昨夏の猛暑や酪農家の離農で乳牛数が減り、生乳の生産量が減少してバターの生産が減ったという。腐敗しやすい生乳は、先に鮮度が求められる牛乳や生クリームに加工され、保存の効くバターなどは生乳が余れば生産を増やし足りなければ不足する。バターは牛乳・乳製品の“需給調整弁”なのだ。
“備蓄”が品薄に拍車
足りないといわれると買ってしまうのが消費者心理だ。農水省の調査によれば昨年11月から12月の小売販売量は前年同月に比べて10~20%増。逆に今年1月以降は前年比1割減に減っている。「お一人様1個限り」という店の販売戦略にあおられて買いだめしたためだ。
“備蓄”に励んだのは消費者だけではない。バターは酪農家から乳業メーカー、一次卸、二次卸を経て、パンや洋菓子、外食などの業務用や小売店の家庭用へと複雑な流通経路をたどる。国が把握している在庫量は乳業メーカーのもので、バターを扱うそれぞれの業者がどれだけ在庫を持っているかは「聞いても教えてもらえない」(農水省OB)。