梅干しや梅酒などで使われる梅の代表的な品種「南高梅(なんこううめ)」が、農林省(現・農林水産省)の名称登録されて、今年で半世紀を迎えた。江戸時代から続く400年以上の歴史を持ち、現在では高級ブランドとしての地位を確立している。しかし、最近では格安の中国産梅干しに押されぎみで、日本人の洋食化で梅干しの需要も減っているのが実情だ。そんななか、主産地の和歌山県田辺市やみなべ町は、ヘルシー志向が高い欧米を視野に入れた販路拡大に乗りだしている。目指すのは、関西初となる国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」登録だ。(秋山紀浩)
米が育ちにくい環境で注目された梅
「ここ1週間が収穫のピーク。こうして話しているけど、本当は休む暇もないんやで」
6月下旬、みなべ町の梅農家、山本茂さん(63)の梅林を訪れると、青梅の収穫が最盛期を迎えていた。じとじとと降る雨のなか、作業員ら10人はぬかるむ斜面をものともせず、手際よく青梅の実をもぎとってはカゴに入れていく。