町内を車で回れば、青梅が入ったケースを満載した軽トラックと何台もすれ違う。側溝にはこぼれた梅があちこちに転がり、ほのかに甘い香りに包まれた。
梅の一大産地として知られる和歌山県の収穫量は年間約7万トン。全国の収穫量の6割を占める。みなべ町だけで約2万トンもの収穫があり、全国の約17%と高いシェアを誇っている。
みなべ町を筆頭に、隣接する田辺市など県南部で梅栽培が行われたのは江戸時代にまでさかのぼる。
「文献などによると、この地区はもともと傾斜地が多く、土壌も養分が少なかった。米が育ちにくく、農家は貧しい状態が続いたようです」と県農林水産総務課の担当者は話す。
何とか稼ぎになる特産物を作ろうと、地元領主や農民らが注目したのが傾斜地でも育つ梅だった。やがて、この梅を用いた梅干しが江戸で人気となり、ついには『紀伊田辺産』として樽詰めで送られるまでになったという。
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こうした伝統をもとにして生まれたのが「南高梅」だ。