「それってキセル、つまり不正乗車ってこと?」
鉄道愛好家が集まった酒の席でのこと。次々と披露される思い出話のなかに「最低運賃で東京から千葉や茨城、群馬などを回った」というエピソードがあった。酔いが回って気が大きくなっているし、“もう時効でしょう”と明かされる類いの過去の話か。
ところがこの乗車方法、通称“大回り乗車”は、JRが定めた運賃のきまりにのっとったもので、多くの鉄道好きが長距離旅行を楽しんでいるという。
JRは運賃計算の特例として、都市圏に「大都市近郊区間」を定めており、この区間内を乗車する場合の特別ルールを設定している。これは、定められた区間内のみを普通乗車券(または回数券)で利用する場合、実際の経路にかかわらず、もっとも安い運賃で乗車できるというもの。経路は自由に選べるが、途中下車はできない。途中下車する場合は、運賃の不足した差額を払わなければならない。路線図とにらめっこしながら、これらの条件をしっかり守ったルートをあれこれ考えるのが、“大回り乗車”の楽しみのひとつというわけだ。