「このオフィスに全員集まるのは週1回だけ。ここに社員はほとんど来ないで自宅で仕事しています。彼らが何時間仕事をしているかログはとってもらっていますが、ぼくの管理外ですね。奥さんが外に働きに出ているので、旦那さんが小さい子供の世話をしているというパターンも多いですよ。うちも子供たちの幼稚園の送り迎えはぼくの担当でした」
と、井上さんとぼく以外、誰もいないオフィスで語る。信頼しあえる関係でしか仕事をしないので、社員たちの日常生活に一切口を挟まない。
「元ヤフーの連中ばかりなので、文化が同質的といえば、そうですね。このオフィスでワイワイやっているわけじゃないので、群れて酒を呑みに行きたいタイプは似合わないかもしれないですね」とは言うが、「異質の集団こそが、企業の活力を生む!」と大きな声をあげるわけでもない。
たとえそう思っていても、井上さんは何事も静かに考え決断していくのだろう。ネガティブで嫌な経験をバネにして飛躍するパターンはよくあるというが、その思いを忘れてしまうのも人の常だ。上手にマイナスな思いを昇華するのが、人生でもビジネスでも極めて大切なノウハウである。
(安西洋之)
ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih