昨年、米金融大手ゴールドマン・サックスの日本法人が導入した福利厚生制度が注目を集めた。全社員を対象に、家族1人につき年間100時間分の介護サービス使用料金を会社が全額負担するというもの。介護大手ニチイ学館との契約により47都道府県で利用が可能だ。
「同僚に迷惑をかける、退職するしかない」。介護で平日も休む必要が出てきたため、思い詰めていた不動産業務担当の40代男性社員が、この制度で会社に踏みとどまった。会社が実施した聞き取り調査に、同じような悩みを抱える社員が苦しい胸の内を漏らしたことが制度創設のきっかけだった。
「出張中に助かる」「介護スタッフから、遠方の両親の様子を聞けるのがいい」など、社内の受け止めは上々。同社の担当者によると、世界に先駆け少子高齢化が進む日本独自の制度として、「インドなど他国の支社からも非常に興味を示された」という。
高齢化と成長 課題克服を世界が注目
ゴールドマンのような手厚い資金支援はどこの企業でもできるわけではない。しかし、介護と仕事の両立支援にはそれぞれに職場なりの工夫で、できる対策があるはず。社員の6割が40代以上という三菱ふそうトラック・バスでは、まずは「IT系システムを完備し、柔軟な働き方のできる環境を整えることで対応していく」(人事担当者)など、企業側もその方策を模索している。