老後のリスクは、「3K」と呼ばれる。「カネ」「健康」、そして「孤立」だ。とりわけ孤立化は、犯罪に走る「暴走老人」を生む引き金にもなる。
大阪府高石市で昨年4~5月、計90台の車のタイヤが相次いでパンクさせられる事件が発生した。器物損壊容疑で逮捕された60代の男は1人暮らし。「鬱憤を晴らすためにやった」と供述した。
警察庁によると、25年に検挙された65歳以上の高齢者は約4万6千人。約7割は万引などの窃盗犯だ。警視庁が分析したところ、万引犯の10人中9人は「友人がいない」「少ない」、3人に1人は心理状態を「孤独」「生きがいがない」と回答した。
「寂しくてしようがなかった」。日雇いの街として知られる大阪市西成区の「あいりん地区」。アパートに1人で暮らす藤原政博さん(75)は振り返る。同地区の住民の4割が高齢者で、4人に1人が受給者と推計される。鉄筋工だった藤原さんもこの10年は無職で、生活保護を頼りにしている。