職員は専門家らに確認するためにいったん引き返した。最終的には場内にある「おさかな普及センター資料館」の坂本一男館長に、「バラハタに間違いない」とお墨付きを得た。魚を発見してからすでに1時間余りが経過していた。
職員らは午前9時45分、仲卸業者のもとへ急行。しかし、あろうことか仲卸業者は「売ってしまった」と答えたという。
スジアラとは、耳慣れない魚だが、中華料理に使うととてもおいしいらしい。約45センチ、重さ約1・2キロのバラハタを仲卸業者は4277円で売っているので、中華料理店に並んだ頃には結構な値がついていたはずだ。
バラハタは食品衛生法で販売が禁じられている対象魚ではないが、筋肉や内臓にシガテラ毒という毒素を蓄積することがある。死亡例はまれだが、下痢、嘔吐、めまい、筋肉痛、温度感覚の異常が、最悪で1年以上継続することがあるというから、危険だ。このため築地市場では販売しないことになっていた。
結局、東京都中央区の中華料理店から「2グループ6人に、蒸し魚として提供した」と4月13日午後に申し出があり、販路は特定できた。幸い食中毒の症状は出なかったが、仲卸業者の間では「築地の信用を落とすとんでもない話だ」と、販売した仲卸業者を非難する声は多い。
それにしても、よく似た2つの魚を見分けた職員。いったいどんな人たちなのだろうか。
検査所では平成26年、イシナギ、オジロバラハタ、バラハタという有毒魚を発見、流通を食い止めた実績がある。