こうして見ていくと、身体においても精神においても、月80~100時間の残業は健康に害を及ぼす、ひとつの目安になると言っていいだろう。前出の脳・心臓疾患の労災認定基準が作られたのが2001年。古い基準ではあるが、今でも十分通用するのだ。
月20日働く人が100時間残業するのであれば、1日5時間の残業となる。9時に出社して18時に帰る勤務時間なら、毎日23時に帰社するのは健康のリスクを高める可能性がある。もし土日のうち毎週どちらか8時間働くのであれば、平日に毎日3.4時間の残業という計算になる。ちなみに「平成28年版過労死等防止対策白書」によれば、2015年、月80時間を超えて残業した労働者がいる企業の割合は、22.7%にも及んだ。冒頭に述べた残業の上限規制による効果が期待されるところである。
働き方だけでなく休み方の改革を
現在「働き方改革」によって、労働者の働き方が見直されている。しかし私は同時に、休み方も改革が進められていくべきだと思う。
一度に長く休んだほうが疲労回復にいいのか、小刻みに休んだほうが健康障害は減るのか。休み方に関する調査研究はあまり進んでおらず、これから精密なデータを出して、調べていくべきテーマである。もし解明できれば同じ労働時間でも、休み時間を充実させることで生産性が高まり、健康も促進する可能性がある。