新線探訪記

"社運をかけた大事業" 相鉄・東急「新横浜線」開業で何が変わるのか (2/3ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

直通用新型車両は「走る広告塔」

 相鉄は長い間、神奈川県内のみを走る鉄道だった。首都圏の大手私鉄では唯一、東京都内を走らない鉄道だったためか、「東京での認知度は低かった」(相鉄)。大手私鉄でありながら神奈川のローカル鉄道だった相鉄が、東京へと進出する転機となったのが2019年11月30日。相鉄線の西谷駅とJR東海道貨物線を結ぶ新線約2.7キロを利用した相鉄・JR直通線の開業だった。相鉄・東急直通線も相鉄・JR直通線も、「神奈川東部方面線」として独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)が整備した路線だ。いずれも相鉄と東京を結ぶ路線だが、JR線よりも東急線への乗り入れに寄せる期待の方が大きいかもしれない。

 というのも、現在JR線への直通は朝のラッシュ時でも1時間当たり4本。日中は1時間に2本にとどまる。これに対し、相鉄・東急直通線では朝ラッシュ時に1時間当たり10本~14本程度の運行が予定されている。その他の時間帯も4~6本程度確保されており、輸送量の差は歴然だ。JR線直通は全列車10両編成なのに対し、東急線直通は10両編成と8両編成が混在するため単純な比較はできないが、およそ3倍の開きがある。

 「乗り入れ用の新型車両は走る広告塔です。都心を走る銀色の電車の中で目につくように塗装を施しました。『あの電車、どこの電車だろう』って、東京の人にも相鉄に興味を持っていただければと」

 相鉄の担当者が胸を張る相鉄・東急直通線向けの新型車両20000系。横浜の海を再現したという「ヨコハマネイビーブルー」と呼ばれる濃い藍色の車体が、確かに目を引く。すでにJR線への乗り入れ用車両として同色の12000系が投入されており、新宿駅や渋谷駅などでは、JRの銀色の車両の中で異彩を放っている。相鉄のデザインブランドアッププロジェクトの一環で導入された車体カラーは「若い女性やお母さんも写真を撮るほど」(相鉄)好評を博しているようだ。

鉄道はあっても駅はない"空白地帯”

 鉄道は通っているのに「陸の孤島」と呼ばれていた地域がある。横浜市神奈川区の羽沢地区だ。東海道新幹線とJR東海道貨物線が通っているのだが、いずれも駅が設置されていなかったためだ。正確には「旅客駅」がなかったというべきで、コンテナ貨物を取り扱うJRの横浜羽沢駅はあった。その“旅客駅空白地帯”に待望の旅客駅が誕生したのは2019年11月。相鉄・JR直通線開業に伴い、羽沢横浜国大駅が設置された。

 新横浜駅から羽沢横浜国大駅へはバスでも向かうことができるが、鉄道を利用すると相当な大回りを強いられる。まず地下鉄で横浜駅へ向かい相鉄本線に乗り換え。さらに西谷駅で相鉄・JR直通線の電車に乗り換えなければならない。

 「毎日、(東京の)大崎から電車で通っていますが、30分に1本くらいしかなくて、利用者も少ないから空いていますよ。まだ駅付近にはほとんど店もありませんし、ちょっと穴場すぎるんじゃないですかね」

 1年前に開業した羽沢横浜国大駅前に店舗を構えるアメックス不動産の担当者は冷静だった。利用者が多くないとはいえ、日中は1時間に2本。相鉄・JR直通線の開業効果は限定的のようだ。

 それでは、相鉄・東急直通線の開業は羽沢地区発展の”特効薬”になるのか。物件価格は上昇傾向といい、駅前にドラッグストアもオープンする予定だというが、担当者は「地域活性化は横浜市次第では」と指摘する。駅周辺は市街化調整区域に指定されているといい、「既存の宅地では建て替えはできても、新規で家を建てることができない」ためだ。

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