「公海の生物保全」 漁業制限に懸念 国連が新条約、海洋保護区検討へ

 

 クロマグロや薬の原料になり得る生物など、国の主権が及ばない公海にいる生物の多様性を守り、末永く利用することを目指す新たな国際条約を、国連が策定することになった。海洋保護区の設定も検討内容に含まれ、日本の漁業に影響が出る可能性がある。

 深刻化する乱獲

 各国の領海や排他的経済水域(EEZ)と異なり、公海では誰もが自由に生物を捕獲できるため、魚の乱獲が深刻化していることなどに対応する。公海の生物利用のルールを定めるこれまでにない国際協定となる。

 開発行為や漁業活動を制限する海洋保護区の設定や、医薬品などの開発に役立つ生物の遺伝資源から得られる利益を公平に配分する制度を条約の要素として検討する。交渉次第では、日本の公海漁業や産業活動に影響が及ぶ可能性もある。

 今後、準備委員会を設置して草案などを検討。2017年の国連総会での決議を経て、政府間交渉を始める予定。第1回準備委会合は来年3月末に開く。

 各国が6月19日に国連総会で決議を採択した。決議には「国の管轄外の海域で、生物多様性の保全と持続可能な利用のための法的拘束力のある文書を作る」と明記された。海洋保護区や利益配分のほか、公海での大規模な活動などに関する環境影響評価制度、発展途上国の科学研究や商業活動に対する先進国からの支援策や技術移転の在り方などを中心に条約交渉を進めることが盛り込まれた。

 海洋保護区の設定が漁業活動の制限につながるとの懸念などから、日本は、ノルウェーなどの漁業国とともに、新条約制定に消極的な姿勢をとっていたが、新条約が既存の漁業資源管理機関などの活動を損なわないようにするとの文言を決議に明記することで賛成に回った。

 各国 対立激しく

 海の面積の約3分の2を占める公海では「公海自由の原則」が国際ルールとされ、漁業や生物の採取を自由に行える。一部の漁業対象種への規制はあるが、これを無視した違法操業や乱獲によってクロマグロが絶滅の危機に追い込まれるなど、生物多様性が失われることへの懸念が高まっている。

 2012年にリオデジャネイロで開かれた「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」で、新条約を作るべきかどうかの議論を国連の作業部会の下で行うことを決定、各国が議論を続けてきた。

 条約交渉の開始は、取り組みが遅れていた公海の生物多様性保護に向けた第一歩だが、各国の意見の違いは大きい。

 欧州連合(EU)や米国などは、漁業を含む人間活動を規制する公海の海洋保護区設定の重要性を主張するが、日本やロシア、ノルウェーなどの漁業国はこれに反対、漁業資源管理は既存の国際機関の中で行うべきだとの立場だ。

 このほか深海などにすむ生物から医薬品開発などに役立つ有用な化合物を探索する行為についても、知的所有権を重視する先進国と「資源は人類の共同財産だ」として、得られる利益の公平な配分を求める発展途上国との意見の対立は激しく、今後の条約交渉は難航が予想される。(SANKEI EXPRESS