おやじと息子なんて分かり合えるものじゃない 映画「コンビニ夢物語」 石倉三郎さんインタビュー
忍び寄る親の余命、財産の相続、同族企業ならば後継者選び-などが引き金となって、親子間で激しい確執が生まれ、互いに取り付く島すらない状況に陥ってしまったケースをよく耳にする。有名企業の“お家騒動”を伝える報道は枚挙にいとまがないし、個人レベルの話に目を向けてみても、実は、恨みつらみといった感情を長年にわたって親子双方が胸にため込んできた結果、しまいには関係がギクシャクしてしまった…という方も、あるいはいるかもしれない。
関係修復の糸口に
「そもそもおやじと息子なんて分かり合えるものではないでしょう。生涯にわたって無理ですよ」。すごい頑固者だったという亡父の在りし日の思い出を念頭に、自信たっぷりに強調してみせたのが演技派俳優、石倉三郎(69)だ。親子の愛情や家族の絆といったワードを並べたて、登場人物たちはハッピーエンドを迎え、めでたし、めでたし-というありがちな物語の運び方については、あまり感心しない様子が見てとれた。
そんな石倉が準主役で出演した新作映画「コンビニ夢物語」(松生秀二監督)は、古ぼけた田舎の酒屋の存続をめぐって、石倉扮(ふん)する店主の頑固おやじと、まだまだ線が細く仕事ぶりも心もとない跡継ぎの一人息子がせめぎ合う“100分(上映時間)一本勝負”の人情物語。親との不協和音に苦しむ者、あるいは、親子関係自体がすでに破綻してしまった者にすれば、本作はいま一度、問題の原因を検証し、今後の生き方に少しでも生かすきっかけを与えてくれそうだ。
頑固一徹の料理人
《田舎の港町で長年、小さな酒屋を営んできた幸造(石倉)が突然、心臓発作で倒れ、東京で暮らす一人息子、幸一(篤海)が病院へ駆け付けた。酒屋で働く同級生の美香(文音)からは「店を継いでほしい」と頼まれるが、聞く耳を持たない。幸造をはじめ、地元商店の猛烈な反対を押し切り、交際していたコンビニチェーン幹部で、思春期の一人娘を持つ年上の女(秋本祐希)に唆されるままに、酒屋をたたみ、ほどなくコンビニを開店させてしまう》
なぜ父と息子は理解し合えないものだと、石倉は考えるのだろうか。「生前、おふくろは息子かわいさもあってか、あらゆることに関して僕の好きなようにさせてくれました。だから母との関係がギクシャクすることはありませんでした。でもおやじとなると話は違います。例えば、僕に『お前は男だろう? やってみろ』なんて調子で叱りつけるわけですよ。どうしたって僕は『お前がそんな男だから俺はこうなってしまったんだろう』と猛反発をするわけです」。父母で違う息子への関わり方を原因に挙げ、特に石倉家において父親の威厳は相当なものだったと付言した。
石倉の父親の頑固ぶりを伝えるエピソードがある。「おやじは明治生まれの料理人なんですよ。おふくろが言うには、父は店が忙しくて手が回らなくなったときに客が『早く料理を出せ』などと言おうもんなら怒鳴りつけたそうです。特におふくろは苦労したそうですよ」。妻や息子に対してだけ強い態度に出ることができる内弁慶ではなく、他人に対しても同じスタンスを貫いた文字通り頑固一徹の人だったようだ。
負けてしまうかも…
プライベートでは息子がいない石倉であるが、周囲の人間に対する自分の“頑固おやじ度”をよくよく推し量ってもらったところ、「俺は幸造に近いんじゃないかな」との答えが返ってきた。本作と同じ日に公開される石倉の初主演作「つむぐもの」(犬童一利監督)では、幸造のさらに上をゆく頑固おやじぶりに加え、偏屈な根性まで据わった脳腫瘍の和紙職人を披露したことを踏まえ、「少なくとも和紙職人のタイプではないですね。僕が幸造の立場だったら、やはり息子の主張に負けて、コンビニのオープンを許してしまうかもしれないですからね」。3月19日から東京・シネ・リーブル池袋ほかで全国順次公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS)
■いしくら・さぶろう 1946年12月16日、香川県小豆島町生まれ。映画、舞台、テレビドラマなどで幅広く活躍する人気俳優。主な出演映画は、2003年「座頭市」、12年「あなたへ」、14年「瀬戸内海賊物語」、16年「つむぐもの」。テレビドラマでは、1988年「とんぼ」(TBS系)など。
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