フランスの名女優、カトリーヌ・フロ(59)が3年ぶりに映画出演を果たした。主演作「偉大なるマルグリット」(グザヴィエ・ジャノリ監督兼脚本)での役どころは、耳を塞ぎたくなる程の絶望的な音痴なのに本人にはその自覚が全くなく、たびたびリサイタルを開きたがっては周囲を困らせる自称“オペラ歌手”だ。
男爵夫人で、裕福な慈善事業家の顔も持つ彼女の周囲には金目当ての薄汚れた人間たちが物欲しげにうろついていた。豪邸に招かれ、下手くそな歌を披露されても、慎重に本心を隠し、礼儀正しく「ブラボー」を連呼する。裸の王様である彼女は、さしずめ「ドラえもん」の人気キャラクター、ジャイアンの女版といったところだろう。
実際には、より高い歌唱力を要求される舞台でも大成功を収めた実力派のフロがこの華麗なる女ジャイアンをどう演じて見せたのかは大いに気になるところだ。本作はフランスのアカデミー賞にあたる「セザール賞」で最優秀作品賞など主要10部門に最多11ノミネート。フロ自身も実に7度目となる主演女優賞候補に名を連ねており、26日の結果発表の行方にフランス映画ファンの注目が集まっている。