15歳少女誘拐容疑の男、身柄確保 全身血だらけ「自殺しようとした」
埼玉失踪少女保護2014年3月に行方不明となった埼玉県朝霞市の中学3年の女子生徒(15)が東京都中野区のJR東中野駅構内で保護された事件で、埼玉県警は28日、未成年者誘拐の疑いで逮捕状を取り指名手配していた中野区東中野、寺内樺風(かぶ)容疑者(23)の身柄を静岡県伊東市内で確保した。
埼玉県警によると、寺内容疑者は首にけがをし、全身血だらけの状態だったため、静岡県内の病院に入院した。「カッターナイフで切った。自殺しようとした」との趣旨の説明をしており、県警は回復を待って逮捕する方針。
捜査関係者によると、女子生徒は「全く知らない男に『お父さんとお母さんが離婚する。弁護士のところに自分が連れて行く』と声をかけられ、埼玉から車で連れて行かれた」と説明。行方不明になった際、自宅の郵便受けにあった「さがさないで」と記されたメモや、その後自宅に届いた「元気に過ごしている」と記された手紙については「男に書かされた」などと話しているという。
寺内容疑者は大阪府池田市出身。11年4月に千葉大に入学し今年3月、千葉大工学部情報画像学科を卒業。今春の就職先も決まっていたという。2月ごろまでは千葉市稲毛区のマンションに居住、その後、中野区のマンションに転居したとみられる。埼玉県警は千葉市のマンションで女子生徒が長期間監禁されていたとみている。県警によると、中野区のマンションから女子生徒の中学校のバッジがついた制服と、女子生徒の名字が刺繍(ししゅう)されたジャージーが押収された。
≪「異性とのトラブル聞いたことがない」≫
身柄を確保された寺内樺風容疑者は、千葉大学工学部に通いながら女子生徒(15)を監禁していたとみられる。千葉大を今春卒業し、就職先も決まっていた寺内容疑者。関係者は「異性とのトラブルは聞いたことがない」「真面目だった」などと話し、事件とのギャップに驚きを隠さない。周囲が異変に気付かぬまま、卑劣な犯行は2年間にわたり続いていた。
教育熱心な家庭
寺内容疑者の実家があるのは大阪府池田市の閑静な住宅街。幼少のころから知る男性会社員(68)によると、地域の子供会のキャンプやハイキングなどの行事に参加し、年齢が下の子の面倒をよく見るリーダー的存在だった。教育熱心な家庭で育ち、市立小を経て大阪教育大付属池田中、高校に進学。男性は「異性とのトラブルなども聞いたことがなく、嘘だろうという気持ち」と驚く。
2011年4月に千葉大に入学した。大学によると、工学部情報画像学科でデータ解析を学ぶ一方、12年10月から1年間休学してカナダに留学するとの計画書を大学に提出していた。
目的は航空免許の取得と語学力の向上で、実際に米カリフォルニア州にあるパイロット養成学校に入学。13年4月下旬から約4カ月間在籍し、13年9月6日には固定翼の単発機を操縦できる自家用機の操縦資格を取得していた。
卒業取り消し検討
学校のホームページでは寺内容疑者の資格取得を紹介、航空機をバックに男性と握手する写真が掲載された。容疑者の自身のフェイスブックにも軍用機のコックピットに座る写真があった。「訓練生として真面目にこつこつ取り組んでいた。性格などに問題があったとは聞いていない」。養成学校の東京事務所の関係者はこう振り返る。
女子生徒が連れ去られたのは14年3月。千葉大によると、14年4月に3年生となった寺内容疑者は14年度の授業を11科目しか履修しておらず、翌4年時は卒論執筆のために必要なゼミ以外には授業を取っていなかった。授業のため大学にくる頻度は週に1、2回程度だったとみられる。
この間、寺内容疑者が暮らしていたのは大学近くのマンションだった。指名手配時の自宅だった東京都中野区のマンションに転居する今年2月ごろまで住んでおり、主に女子生徒を監禁していたのはこのマンションとみられる。
寺内容疑者の隣室に住んでいた男性(26)は3月上旬、引っ越しの掃除に来た寺内容疑者が女性を連れていたのを見たという。「階段ですれ違った。引っ越しを手伝う友人なのだと思った」。女性連れの姿を見たのはこの時だけだが、被害者の女子生徒だったかどうかは分からないという。
千葉大を今月23日に卒業し、消防設備関係の会社に就職が決まっていたという寺内容疑者。千葉大は28日に会見し、「本学卒業生がこのような事件を起こし、誠に申し訳ない」と陳謝、卒業取り消し処分を検討することを明らかにした。(SANKEI EXPRESS)
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