大正時代になると、鑑三は愛娘ルツ子を失った悲しみを克服すべく、再臨運動の展開に向かう。キリストの再臨を待望する運動だ。福音派を中心に日本のプロテスタントが超教的に加わっていった再臨運動だったが、自分の後継者と期待していた有島武郎が心中事件をおこすなどの現実を目の当たりにして、鑑三はふたたび聖書に回帰した。かくて、ここからが昭和の鑑三の3つ目の「鑑」になる。伝道の本質にひたむきになったのである。
ぼくが鑑三を最初に読んだのは『後世への最大遺物/デンマルク国の話』だった。そこに、キリスト教を身に付けるにはジョン・ロックの「ヒューマン・アンダースタンディング」を読むべきで、それが世界理解のために必要なんだ、それはそのまま二宮尊徳の思想と同じなんだと書いてあって、びっくりした。
ついで『代表的日本人』を読んで、さらに腰を抜かした。ここには日蓮、中江藤樹、二宮尊徳、上杉鷹山、西郷隆盛こそが日本のキリスト者だと書いてある。『キリスト伝研究』には「伊藤仁斎、中江藤樹、本居宣長、平田篤胤は日本に於ていくぶんにてもバブテスマのヨハネの役目を務めた者である」ともあった。うーん、なんという独創的な発想の持ち主なんだと驚嘆したまま、ぼくはほぼ30年をかけて「内村鑑三全集」全40巻を本棚に並べていった。