背後には大きく削られた三原山の斜面。上空を覆う厚い雲が山頂も隠す。二次災害の危険もぬぐえず、隊員は双眼鏡片手に交代で山肌を監視した。「時間がないときはあのビニールハウスの前に(避難)誘導しろ」。引き継ぎで隊員が注意事項を告げた。
周辺からは、大雨の前に仏壇が見つかった。200メートル上にある民家から押し流されてきたという。民家の住民は見つかっておらず、隊員は「ここで救出を待っている可能性がある」と力を込める。すでに生存率が急激に下がるとされる「72時間」は過ぎたが、東日本大震災など数々の災害派遣の経験を持つ隊員は「望みは必ずある」。捜索中断にははがゆい思いを抱き、空をにらんでいたという。
50センチ、60センチ…。不明者を傷つけないように、隊員は手作業で掘り進める。土砂の中からは、皮の袋にブローチ、一部がはがれたアルバム…。隊員は丁寧に泥をぬぐい、そばに並べた。こうした品々を大切に持ち帰る家族もいる。「どんなに苦しい思いをしているのだろうと、胸が締め付けられる思いがした」