アルミ鋳造で作られた作品は高さ約133メートル、幅16メートル、奥行き12メートル。総重量は約26.5トン。名和の作品があるアラリオ・スカルプチャーガーデンには、他にも世界的に有名なキース・へリング、ダミアン・ハーストなどのアーティストの彫刻が野外展示してある。その中でも名和の作品は異彩を放っていた。
白一色で、見たこともない形。あえて、形容するなら、増殖過程にある入道雲のような躍動感があり、大胆でありながら丸みを帯びた立体的な彫刻の陰影は女性らしいラインをほうふつとさせる。「Manifold」とは、数学用語で「多様体、多岐管」という意味。情報、物質、エネルギーの3つのテーマを一つの巨大な形態にして、街中にいきなり出現する状況を作ったという。
今回は巨大な作品ということもあって、計画段階から「デジタルモデリング」という技術を駆使して精度を上げた。仮想の3次元空間にデジタル粘土で作成した球体をランダムに配置し、コンピューターの画面を見ながらペン型のタッチングデバイス(触感がわかる機器)を使ったという。それを空中で動かしながら、コンピューター内のバーチャルな粘土を動かし、実際に触っているような感覚で、削ったり膨らませたりして造形ができる。それはまるでSFの世界だ。