第3に、化学兵器の廃棄に動き出したことは重要な前進であるものの、これは死者が11万人を超えたとされるシリア内戦を終結させる打開策ではない。アサド政権が当面、化学兵器を使用する可能性は低くなったが、廃棄計画は政権の存続を前提にしたものでもある。和平プロセスが本格的に始動しない限り、政権はロシアから供与された各種の通常兵器で反体制派を攻撃し続けるだろう。
プーチン政権は、シリアが中東地域での影響力を保つ上で最後の“橋頭堡(きょうとうほ)”だと考え、アサド政権を全力で擁護してきた。国連安保理で対シリア決議案に3度も拒否権を行使したことからも明らかなように、ロシアにとってシリア問題は、米国の“一極支配”に対抗するための好材料ともなっている。プーチン氏が、ノーベル平和賞に値するような高邁(こうまい)な理想に基づいて行動しているわけではない。(モスクワ支局 遠藤良介/SANKEI EXPRESS)