台風30号のコース=2013年11月8日、フィリピン・レイテ島の中心都市タクロバン【拡大】
≪インフラ壊滅 食料届かず略奪も≫
押し寄せる高潮に流され、必死にココナツの木にしがみついた。「津波のようだった」。目の前で親族が濁流にのみ込まれた。
猛烈な台風30号が襲ったフィリピン・レイテ島タクロバン。台風襲来から4日目の11月11日も、路上には遺体が放置され、異臭が漂う。停電が続き救援物資は不足。復旧は遠く、家族を失った人々の悲しみは深い。
漂う異臭
「耳をつんざく暴風雨とともに突然3メートルぐらいの高潮が自宅を襲った」
土台のコンクリートだけが残る自宅前で呆然(ぼうぜん)と立ちすくんでいたロメオ・モンザレスさん(55)は、悪夢の朝を振り返った。
木や竹にしがみついて1時間しのいでいると高潮が引いた。「神に親族の無事を何度も祈ったのだが…」。モンザレスさんは、胸の前で十字を切ってうつむいた。