泉鏡花に『茸(きのこ)の舞姫』がある。杢若(もくわか)は、ふいに「実家(さと)に行く」と言って森に入るクセがある。ある夜、杢若は森のキノコたちが神官や天狗や魔王や白拍子となって、祭礼のように踊っているのを見た。その一つを持ち帰ってくると、近所の娘たちが裸同然となって官能的な舞姫になっていた…。こんな目にいつか出会ってみたいものである。
【KEY BOOK】「キノコの教え」(小川眞著/岩波新書、840円)
京大菌類学を牽引している小川眞によるキノコ入門書。マイコロジーの基礎もわかるし、話題も豊富で、とてもわかりやすい。キノコは植物と異なる独自の進化を遂げてきた。最初はカビのような生き方を、ついで地中の土壌とともに植物の根と一緒になって生き、最後は空中に胞子をとばすためにニョキニョキと傘型のキノコをめざした。小川はクルベジ(クールベジタブル)やクールフォレスト運動の推進者でもある。炭と森との共生力も訴える。