【KEY BOOK】「虫をたおすキノコ」(吉見照一著/大日本図書、1008円、在庫なし)
子供向けだが、ぼくの小学校時代のセンセイによる名著中の名著だ。「虫をたおすキノコ」とは虫に寄生して、虫をのっとる冬虫夏草のことである。センセイが自宅の前の北白川天神の森で見いだしたクモダケを持ち帰ると、中に菌糸にぎっしり囲まれて空洞化したチタテグモが出てきたという話から始まる。センセイは口ぐせのように、植物の生産力と動物の消費力をともにつなげて支えているのがキノコなんだと、何度も強調されていた。
【KEY BOOK】「菌類の生物学」(ジェニングス&リゼック著、広瀬大・大園享司訳/京都大学学術出版会、2625円)
カビもキノコも同じ仲間で、菌糸をもっている。なかで子実体をもつものがキノコと総称されてきた。形で分けるなら、担子菌のシイタケ風に傘を広げるもの、腹菌類のキクラゲ風に奇抜な恰好をとるもの、子嚢菌のチャワンタケのように椀状になるもの、それ以外のものとなる。ぼくは粘菌にぞっこんだ。高速度撮影の粘菌生活史を見たときから魅せられて、ことあるごとに粘菌生活が理想だと説いてきた。