【湘南の風 古都の波】
雲の切れ目から、薄い日が差してきた。深い緑のコケをバックにした青紫の花びらは日を浴びると、ひときわ鮮やかに映える。鎌倉市扇ケ谷の谷戸の奥にたたずむ禅宗寺院、扇谷山海蔵寺の境内にはリンドウの花が咲き競っていた。
垂直に伸びる茎と地をはうツルのような茎。同じリンドウでも2つの種類があるようだ。地をはうツルの上に一列縦隊で咲く花も、太陽に向かって真っすぐに花びらを開いている。
「リンドウは下を向かない」
そう言いたくなるようなひたむきさが、古くから鎌倉の人たちに愛されていたのだろうか。現在は「ササリンドウ」が鎌倉市の市章になっている。
市役所の公式サイトにはその市章の由来が中学生向けに書かれていた。
『ササリンドウ(笹竜胆)はリンドウの葉が笹に似ていることからの名前ですが、植物名としてより、家紋として有名です』
もともとは源頼朝の家紋と言われていたそうで、鎌倉市は1952(昭和27)年11月3日、市章に制定したという。さすが頼朝さんあっての鎌倉…と言いたいところだが、サイトにはこんな説明もついていた。