もともと同一国家
ロシアは黙って見ているわけではない。プーチン政権はモルドバの名産品で、ロシアで全売り上げの約3割を販売するワインを輸入禁止にして、モルドバに圧力をかける。国内でも、ロシア語を話す旧共産勢力が「EUに入れば先進国との商品競争に負け、経済が疲弊する」と反対運動を続ける。
しかし、モルドバのユリエ・リャンケ首相(50)が「欧州への統合は、わが国に恩恵をもたらす」と強調するように、過半数の国民が支持するEUへのアプローチは揺るぎない姿勢となっている。
「モルドバの歴史的大転換」(専門家)の決断には、先にEUの一員となったルーマニアが大きな役割を果たしている。「兄弟国家」(専門家)のルーマニアが、モルドバをEUへとつなぐ橋渡し役を務めているのである。
両国共通の青、黄、赤の3色旗が示すように、モルドバとルーマニアはもともと同一国家だった過去があり、言葉も同一言語。モルドバでは二重国籍が認められ、多くの国民がルーマニアの旅券も有している。人々は簡単にプルート川を越え、欧州の風情を漂わせる、きらびやかなショッピングセンターで買い物や食事を楽しむ。