アフリカの大河コンゴ川の支流の一つのサンガ川、そのまた支流の一つ、ンドキ川が公園の森を潤す。「ンドキ」は熱帯林の中で暮らす先住民の言葉で「悪霊」の意味だという。濃密な森林と点在する湿地が人間の侵入を阻み、長く手付かずのまま残されてきた。
ゾウやゴリラが集まり、ワニやカワウソ、多数の鳥などが生きる湿地は「バイ」と呼ばれる。ゾウが歩き回ることで、バイには編み目のようなせせらぎと大小さまざまな池がつくられる。ゾウなしにはバイは存在し続けられず、ゾウはバイなしには生きられない。
世界遺産
カヌーの先頭に立ってンドキ川を行くモベンバカ(24)が、川の水をすくって口に運ぶ。手元からこぼれた水滴が熱帯の日差しに輝きながら川面にはじける。
「昔は大きなサンガ川の水を飲んでも大丈夫だったけど、今は駄目。でもこの川なら大丈夫さ」「ゾウがいなくなったら森の中は歩けなくなるし、女たちはキノコを集められなくなる」。彼は、森の中を縦横に走るゾウがつくった道を歩いて果実やキノコなどを集め、狩りをすることで命を支える先住民の一人だ。