「意外に思われるかもしれませんが、実は誰の身にも起こりうる、身近な体験にも通じる話です。例えば朝の占い番組があるじゃないですか。占いを信じて、今日は白い服しか着ない、と思うこともあるし。そんな小さなことが、大きく膨らんでいってしまったのがマクベス夫妻だと思います」。シェークスピア劇がいつまでも古びない理由の一端が、常盤の言葉から伝わってくる。
スーパー不器用
とはいえ、20年の女優業で本格的な舞台はわずかに5度目。「初シェークスピアです」という。「踏み込まずに済むのなら、踏み込みたくない世界。でも舞台を踏むたび、未来が開けてくるという感覚になる。輝いているけれど、怖い。舞台はそんな場所」と挑戦者の立場を語る。
けれど今回は「スタッフも含め、このメンバーとなら、私にはとても縁遠かったシェークスピアの世界にも飛び込めると思った」。
「もう、わからへん」。稽古中、常盤がつぶやくのを聞いた。すると、まるでマウンド上で窮地に立った投手の周りに捕手やコーチが駆け寄るように、堤と長塚が常盤の所に集まった。そして2人の助言を聞いた常盤が、しばし考え込むような表情を浮かべた。