大正時代に銀行として建てられた洋風建築は、山鹿灯籠民藝館として活用され、前述の山鹿灯籠の数々を見学することができる。他にも大きな蔵のある酒屋の建物を食事処やギャラリーとして改築するなど、古い街並みを現代に生かそうと取り組んでいる人たちがいて、過去との時間のつながりが感じられる。
この地域の子供たちは、発表会や朗読会など、機会あるごとに誰もが八千代座の舞台に立ち、芸能文化の体験を体の奥底に蓄えながら育つ。地域の人たちは、自分たちの経てきた歴史を、芝居や芸能を通して誰もが自然に学ぶことができる。芸能に関わる自分にとって、その環境は羨(うらや)ましく、また未来への可能性だとも思えた。
灯籠踊りの艶やかさ、八千代座の躍動する佇まい。精緻な灯籠づくりや、時間が積層した町並みなど、眼に見えるもの自体の美しさがある一方で、同時にそれらを守り続けていこうとしている人々の思いの美しさにも心打たれた。(写真・文:俳優・クリエイター 井浦新/SANKEI EXPRESS)